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香港のオークションから見る日本貨幣の魅力

2021年4月6日に、香港のStack’s Bowers and Ponterioが開催したオークションにおいて、日本の宝ともいえる貨幣が出品されました。今回は、そのオークション結果を参考に、日本の貨幣収集にも魅力はある点を解説したいと思います。

目玉の1つが天正菱大判金

日本貨幣の出品の中で、これは!と思ったもののまず1つ目が『天正菱大判金』です。日本で最初の大判金であり、現存数が6枚と言われています。おそらくほとんどが博物館所蔵であるため、こうしてオークションに出品されることは極めて珍しいと思います。

しかも出品の大判はPCGSの評価がMS60であり、表面に人が触れた形跡はほとんどなく、時代を感じさせながらもそれがむしろ美しい淡い金色の輝きを出している逸品です。予想金額が70万米ドル~90万米ドルに対して、ふたを開けてみると落札金額は192万米ドル。およそ2億円といったところでしょうか。なかなか実物を見ることも少ないと思います。画像で確認できますので、是非ご覧ください。

実際のオークション結果および画像

 

もう1つの目玉が明治3年8点試作貨セット

もう1つの目玉は、Leonard Charles Wyon作の『明治3年試作貨8枚セット』です。あの有名なWilliam Wyon(ウィリアム・ワイオン)の長男が日本の明治時代の貨幣製造にかかわっていたのです。西洋の手段で製造された最初の日本の硬貨ともいえるこの試作貨。2セットしかないといわれており、その1セットはロイヤルミント博物館が所蔵している模様です。なお、大英博物館と日本銀行のコレクションにも試作貨はあるものの、いずれも単品であり、セットではないため、大珍品が出品されたといってもよいでしょう。

この試作貨では、裏面が旭日図となっていますが、その後実際に流通したものの裏面は菊の紋と錦の御旗です。なぜ裏面が差し替えられたのか?貨幣学の研究からも面白そうな内容ではあるものの、実際の理由は不明なままのようです。

日本は1868年に香港のイギリス造幣局から機器を購入し、明治の幕開けにふさわしい金銀銅貨を鋳造します。オリジナルのプロトタイプは、幕末から明治期に活動した日本の金工師である巨匠(Japan’s master engraver)加納夏雄が、デザインをてがけた増田友夫と書家の石井宏香との共同により制作しました。正式に日本が明治時代の新貨幣を鋳造し始めたのは1870年のこと。その後、1871年(明治4年)に制定された新貨条例により、日本の通貨単位が「円」に定められます。

そう、2021年はその時から見てちょうど150年後にあたります。この150年という記念すべき年に、こうした大珍品が出品されたことは大変興味深く、日本の明治期の貨幣が再度注目をされてもよい時期に来ているように感じます。

さて、実際のオークション結果ですが、予想75万米ドル~150万米ドルに対して、結果は156万米ドル。1.7億円といったところでしょうか。これほどまでに高額となる日本貨幣は、今後出てくることは極めて稀であると思います。

実際のオークション結果および画像

 

この他にも数多くの日本の逸品といえるコインが出品され落札されていますので、結果を知りたい方は是非Stack’s Bowers and Ponterioのホームページをご確認ください。

日本の貨幣にも再注目される時期に来ている

先述しましたが、明治期の貨幣が再度注目されるよい機会になったと感じています。どうしても海外のコインの方が華やかかつ収集人口が多いこともあり注目されやすいですが、日本の貨幣も魅力はたくさんあります。私も以前収集していた1円銀貨を再度収集し始めようかと思います。日本の偉大なる金工師である加納夏雄に対する注目が世界でも集まってきているようにも感じます。

さて、日本のコインブーム、再び起こるでしょうか?昨年は東京オリンピックのコインも注目されましたし、今後期待したいところですね。

<参考>
Stack’s Bowers and Ponterio Presents THE PINACLE COLLECTION
日時:令和3年4月5~11日(香港)

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